アキアカネ
      赤トンボは山から
                 …赤トンボの不思議な生態を追って

 「夕焼け小焼けの赤とんぼ,負われて見たのはいつの日か」で始まる「赤とんぼ」の歌は,何となく秋を感じさてくれる僕の好きな歌の一つでもある。この歌に歌われている「赤とんぼ」はその名前の通り,夕焼けの空の色にも負けないぐらいに真っ赤な色をしていて,黄金色をした稲穂が秋風に揺れ動く頃になると,どこからともなくやって来て,消えてしまう。古くから「蜻蛉洲:あきずしま」と呼ばれ,トンボの豊富な日本でも,とりわけ身近な赤とんぼ,彼等はいったいどのような生活をしているのだろうか?意外と知られていない赤とんぼ達の生態を追ってみた。

 大学生の頃,サークルの仲間達と一緒に登った北八ヶ岳の稜線上で,数え切れない数のトンボの群れと出会った。「両手の指全部にトンボを一匹づつ止まらせてみせる」などと言ってはしゃいでいる僕を見て,昆虫に詳しい友人が「これは赤トンボさ,秋になると大群を作って山を下っていくんだよ」と教えてくれた。歌にも登場する赤トンボと言うのは1つの種類の名前ではなく,アキアカネ,ナツアカネ,ミヤマアカネなどのアカネトンボの仲間達の総称。これらの仲間は羽根の模様や胸の斑点などに多少の違いが見られる他は非常によく似た生態を持っている。生み落とされたアカネトンボの仲間の卵は湿地や水田などでふ化する。幼虫はヤゴと呼ばれる肉食の水性昆虫で,発達した下顎をモリのように突き出して,他の昆虫や小動物を捕らえて食べ,数年間に10回以上もの脱皮をして成長する。成熟したヤゴは,初夏水を出て水辺の植物などに止まって脱皮し,成虫に変身する。 羽化するとまもなく,まだ黄色い体色のアカネの仲間は涼しい高山や高原に移動し,夏の間を過ごす。この間,鋭い顎で空中を飛ぶ昆虫を捕食しながら徐々に成熟し,体色も赤みを帯びてくる。やがて下界に秋風が吹く頃になると,山で過ごしていたアカネの仲間達は何万匹もの群れになって生殖のために山から平野部に降りてくる。この頃になるとトンボの多くは2匹がつながってカタカナの「キ」のような状態(連結:おつながり:タンデムなどと言う)になって飛行するようになる。生殖期を迎えたトンボ達が連結するのは,実はトンボ達の種族維持のための必死の姿なのだ。連結している上のトンボは♂で、♂は尾の先端に付いている付属器で下になっている♀の頸部をつかんで飛んだり,この状態で下の♀が水溜まりに産卵したりする。トンボがこんな連結をするのは,♂の交尾器官の位置に由来している。トンボの生殖腺は尾のように見える腹部の先端に近い第9節に開口しているが,♂の交尾器官は羽根の付いている胸部に近い2〜3腹節と言う部分にあるため,交尾をする時には,下になった♀は腹部を大きく曲げて♂の交尾器官に生殖腺の開口部を押し付けた状態になる必要がある。連結した状態はこの姿勢が取り易く,♂にとっても特定の♀を独占して確実に産卵させられるなど有利な条件を持っている。

 このトンボ,空中で静止したり,実に多様な飛び方をする。これは4枚の羽根が単に上下に動いているだけでなく,一枚一枚が8の字を描くように動くことで初めて可能になっている。トンボの仲間は古生代の石炭紀に地上に出現した最古の昆虫達の1つで,せいぜい200万年程度の歴史しか持たないヒトを尻目に,3億年以上もの種としての寿命を誇っている。何度もの地球の変動を乗り切ってきたトンボ達の生態には,未だ我々の知り得ない秘密が沢山隠されているような気がする。
クズ (葛)  Pueraria Thurubergiara [まめ科]
 夏から秋にかけて,学校の周辺の空き地のあちこちに地面が見えなくなるほども緑の葉を広げ,旺盛な生命力を見せているクズの大群落を見かける。草刈りの時の憎まれもののクズも,秋になっ咲く赤紫色の小さな花はとても美しく,秋の七草の一つにも数えられている。クズの根には,良質のデンプンが沢山含まれており取り出してクズ粉として利用されている。

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