スプリング・エフェメラル
       10年かかって花開く
               …「早春の妖精」カタクリの生活史をさぐる

 早春,まだ木々の芽吹きには少し間のある雑木林の落葉のつもった林床は,木々の間から差し込む春の陽射しを浴びて可憐な紅紫色の花をつけたカタクリにおおわれる。このカタクリ,スプリング・エフェメラル(春先の短い命)とも呼ばれる通り,葉を落としていた木々が芽吹き,緑の葉を一面に広げる5月頃になると,全体が黄色になって枯れてしまう。春先の短い期間だけしか姿を見せないカタクリのこの生き方は,普通の植物とはチョッピリ毛色が違っている,どうしてなんだろう。カタクリの生活史に秘められた,生き残り戦略を探ってみよう。

 カタクリはユリ科カタクリ属の多年草で各地の山野に広く分布している。3月下旬,雪の消えたばかりの落葉広葉樹林の林床に芽を出し,葉を落とした木々の間から差し込む強い陽射しを独占して成長し,淡緑色で紫色の斑点のある2枚の葉を大きく広げる。やがて,4月中〜下旬に葉の間から長い花茎を伸ばし,先端に紅紫色で6弁の花を1つつける。花は下を向いて開き,花びらは後ろに大きくそりかえる。カタクリは典型的な虫媒花で,春を待ちかねて活動を開始した昆虫達の力を借りて受精する。カタクリの種子は,アリを引き付ける物質を沢山含んでおり,アリの力を借りて分散していく。この様にして分散した種子のうちの何分の一かが翌春実生(みしょう)として発芽する。実生は2年目からは小さな葉を1枚だけ出して春先の2カ月間盛んに光合成をし,地下茎に貯蔵物質のデンプンを蓄える。このようにして成長し,種子が発芽して7〜8年後にやっと花をつけるようになる。
 
 カタクリが春先にしか姿を見せないのは,どうしてだろう。カタクリが生きている落葉広葉樹林は,春〜秋にかけて緑の葉に覆われ,カタクリが生きている林床には殆ど光が届かない。このような状態で葉を付けていると,いたずらにエネルギーを浪費してしまう。そこで,林床にも十分に光が降り注ぐ早春の2カ月余りの間に,おお急ぎで光合成をして,地下茎に貯蔵物質のデンプンを蓄え,残り10カ月間は地上部を捨てて貯蔵物質を守っている。この様な生活史を繰り返すため,カタクリは非常にゆっくりとしか成長できない。そんな事を知ってしまうと,カタクリが何年もかけて一生懸命溜め込んだ地下茎のデンプンを横取りしてカタクリ粉として使うなど,非常に罪な事だと反省させられる。
山腹に鹿型出現!
 中庭から,盆地の西にそびえ立つ南アルプス連山の前峰薬師岳の山腹に目をやると,山頂に向かって角を立てて跳び上がろうとしている鹿の形をした雪型を見ることができる。雪型は,雪解けが進んで黒い色が目立つようになった山肌に,沢や谷筋などの雪の多い場所に残っている雪が作る形のことで,山の地形に応じて様々な形を作り出す。南アルプスに連なる農鳥岳や甲斐駒ヶ岳などは,雪型の作り出す形が元になって名づけられた。
ウスアカカタバミ (薄赤傍食)  Oxalis corniculate [かたばみ科]
 大空像を取り囲むように広がる中庭の芝生のあちこちで,ハート型をした赤紫色の葉に小さな黄色の花をつけたこの草をみつけた。同じ形の緑の葉のカタバミともに,どこでも普通にみられ,春〜夏にかけて黄色い花をつける。カタバミの仲間の葉や茎にはシュウ酸が多量に含まれているので,噛んでみると,かなり強い酸味がある。

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