見たことがありますか
     イ ネ の 花 開 く
              …初秋のたんぼを覗いてみよう

 夏休みも終わりに近い8月末,学校の周辺に点在するたんぼに青々と茂るイネの少し伸び始めた穂に,白い色の小さな花がたくさん咲いているのをみつけた。私達が,毎日食べているコメは種子植物であるイネの種子。だから,イネに花が咲き,受精が起こるのは当然のことなのだが,案外知られていないし,イネの花を実際に見たことのある人はもっと少ない。私達になくてはならないコメ,そのコメを実らせるイネの花の秘密をさぐってみよう。
 現在,世界中で広く栽培されているイネの原産地は,熱帯アジアに属するインド,インドシナ,中国南部辺りだと考えられている。日本には,縄文時代の末期から弥生時代の初期にかけ,中国の揚子江下流の江南地方からもたらされたと言うのが定説になっている。イネは栽培されている地方の気候風土に適応してさまざまな種類に分化しているが,種子であるモミの外観から,インドから東南アジア一帯にかけて広く栽培されている,粘りの少ない「長粒型」,東南アジアの島々やヨーロッパ,アメリカ南部で栽培されている粘りのやや少ない「中間型」,日本や朝鮮半島,華北一帯で栽培されている味が濃厚で粘りの強い「短粒種」の3つに分けられている。日本型の「短粒種」は,病気にはやや弱いが,茎が強く,肥料を多量に施すと容易に収穫量を高めることが出来るなどの特徴を持っている。
 苗代で育てられ,3〜5本ずつ植えられたイネは,根に近い茎の下部で盛んに分けつして,茎の数を増やして横に拡がると共に,茎にある節と節の間が伸びて背も高くなる。やがて茎の先端の成長点付近に穂のもと(幼穂)が出来,穂首が伸びて葉の間から姿を顕わしてくる。穂に付いたイネのツボミ(穎花:えいか )は穂が外に出ると,1〜2日の間に中央で割れて花が開く。イネの開花は朝8時ごろから,昼ごろにかけて起こり,特に日中開くものが多い。イネは,1つの花の雄しべの花粉が同じ花の雌しべについて受精する自家受精植物で,花が開くと同時に雄しべが伸び先端にある葯(やく)が花の外に押出されて破け,中の花粉が2つに分かれ羽毛状をした雌しべの柱頭に落ちて受精する。自家受精のため,花は2時間程開いているだけで直ぐに閉じてしまう。雌しべの先端の柱頭についた花粉は直ぐに花粉菅を伸ばし,胚嚢細胞中で卵細胞と極核とに重複受精をする。受精した卵細胞は次世代を生み出す胚になり,極核は栄養分となる胚乳になる。胚乳にはデンプンが多量に蓄積されて君達が食べるコメになる。稲穂が伸び始めたたんぼでは,イナゴをはじめとするさまざまな昆虫や小さな花をつけたいろいろな植物が君を迎えてくれる。西高の周囲に残っているたんぼは,自然の宝庫。荒れるに任せた休耕田や宅地造成地ばかりが目に付く昨今,私達の食糧を生み出してくれる貴重な緑地…水田に関心を持って,もっともっと大切にして欲しい。
 いなご(蝗)
 直翅目(ちょくしもく)バッタ科の昆虫で,イネの害虫の一つ。卵の状態で冬を越し,年に一回発生する。成虫は体長30〜35oで,イネやイネ科の植物やトウモロコシなどの葉を食べる。BHC剤に弱く,この農薬が盛んに水田に散布されていた頃はほとんど姿をみかけなかったが,BHCが残留毒性を指摘されて使われなくなったため,最近では再び水田でみかけるようになってきた。昆虫類を食用にする習慣の乏しい日本では珍しく良く食べられ,佃煮として市販されている。…朝,まだ露の残っている頃にたんぼに出掛けるのがいなごを掴まえるこつ。日が高くなってくると,いなごの動きが活発になって掴まえられなくなってしまう。
ミゾカクシ (溝隠し) Lobelica chinensis [ききょう科]
 学校の西側に拡がっているたんぼの畦でいなごを追いかけている時に,畦の周囲で小さな花をつけているこの草を何株もみつけた。たんぼや溝などの湿り気のある場所によく生える多年草で,地面を這うようにして伸びる細い茎に互い違いについた(互生)細長い葉の脇のところどころから伸びた3pぐらいの長さの柄(花柄)の先に1つづつ,かすかに紅紫色をした5枚の花びらをもつ1pほどの小さな花をつける。

トップページに戻る甲府西高編のトップページに戻るこのページの先頭に戻る